北欧紅茶

カルダモン香るセムラ

カルダモン香るセムラ

スウェーデンには、長い冬が終わり春の訪れを感じさせる特別なお菓子があります。菓子パンのようでシュークリームにも似ているそのお菓子の名前はセムラ。少しざらつくアーモンドのあんに甘くない無糖のホイップクリーム、生地に練り込んだカルダモンが爽やかに手伝って、思いの外軽やかに食べてしまう。春先にクリームたっぷりな夢のようなお菓子に出会えるなら、長い冬も悪くはないなと思うはず。口いっぱいに頬張って、ほっぺにクリームがついても気にしないで食べてほしいお菓子です。

セムラはいつ食べるもの?

残念ながらセムラは1年中食べられるものではありません。もともと四旬節(水曜日からイースター前の40日間のこと)に断食する前日に食べるお菓子でした。
断食前に食べるものなので、栄養のある、甘くて脂肪たっぷりなものを食べて明日からの断食に備えようとする考えだったのでしょう。今では断食の習慣も薄れ、クリスマス後あたりからイースターくらいまで、スウェーデン中のベーカリーやケーキ屋さんでセムラが並びます。

そもそもイースターとはなにか

日本ではあまり馴染みのないイースターですが、最近では一大イベントとして、ハロウィーンやクリスマス、バレンタインの他にイースターも肩を並べるようになりました。たまごモチーフのものを飾りカラフルなお祭りの印象があるイースターですが、日本語でいうと復活祭となり、イエスキリストの復活を祝うお祭りです。ちなみにイースターは毎年日付がかわり、春分の日の後の満月から最初の日曜日がイースターとなります。

カルダモンの不思議

セムラにおいて、風味の決め手となるものはカルダモンでしょう。カルダモンはスウェーデンのみならず、北欧諸国においてよく使われるスパイスです。カルダモンのひとりあたりの消費量がサウジアラビアに次いで、フィンランド、スウェーデンと続いている事にもあらわれています。
カルダモンはスウェーデンのお菓子やパンに欠かせない大切なスパイスです。料理のみならず、お菓子やパンに使うとは意外でしたが、食べてみると甘さとカルダモン特有の爽やかさがよく合い、ついつい入れてしまうのもよくわかります。カルダモンを入れることにより、スウェーデンらしい味を作り出しています。

人によって違う?セムラの食べ方

セムラのポピュラーな食べ方は、被せてあるふたでクリームをすくい、そのあとは豪快にかぶりつく!食べ方だと思います。その食べ方に相反するのが、軽く温めた牛乳をかけて食べるもの。スウェーデン人が牛乳をかけて、スプーンで崩して食べる様子を初めて見たときは衝撃的でした。シュークリームには牛乳をかけて食べないし、あまり美味しそうには見えず。この食べ方はHetvägg(ヘートヴェッグ)というそうで、ご老人にも人気のある食べ方だそう。

セムラはパン生地で出来ているので、冷蔵庫で保存すると、かたくパサついてしまいます。そこで美味しく食べられるのがHetväggです。なんとなく抵抗がありましたが、物は試しで温めた牛乳をかけて恐る恐る食べてみると。意外や意外。とても美味しい。パサついた生地が牛乳を含んで食べやすく、温めた牛乳をかけることによってカルダモンの香りもよみがえりました。セムラをひとつ食べるのは、すこし重たいなと感じる時でも、この食べ方だと不思議と食べられてしまいます。セムラがかたくなってしまった際は、ぜひお試しください。

セムラのレシピ

材料(8個分)

【パン生地】
無塩バター・・・35g
牛乳・・・170ml
卵・・・40g
ドライイースト・・・5g

[A]
強力粉・・・150g
薄力粉・・・150g
砂糖・・・25g
塩・・・5g
カルダモン・・・3g

溶き卵・・・適量

【フィリング】
アーモンドパウダー・・・120g
砂糖・・・85g
牛乳・・・100〜120ml

【生クリーム】
生クリーム(45%)・・・180ml
粉糖・・・適量

作り方

・カルダモンホールを使う場合は、殻を割り中の黒い種子を取り出し、すり鉢やミルサーなどで粗い粒が残る程度に潰す
・パン生地を作る際、ホームベーカリー使用ならば3の行程からスタート

1. 小鍋にバターを入れ、弱火で溶かす。牛乳も加え人肌の温度にし、ドライイーストを加え混ぜる。(カルダモンホールを使用の場合は、外側の殻も牛乳に入れて軽く煮出し人肌の温度にする)

2. ボウルに[A]を入れ泡立て器で軽く混ぜ合わせ、牛乳と卵を合わせた液体を加えてヘラなどで混ぜ、ある程度まとまってきたら(この段階では粉っぽくてok)、台に出してこねる。捏ね始めはベタつくが、台にこすりつけるようにしてこねていくと、次第にまとまってくる。10〜15分ほどこねて、生地を指先で薄く伸ばした時に破けず透けて見える位になれば、こね上がり。ブチっと切れてしまうようなら、もう少しこねる。2倍近くに膨らむまで1次発酵。

3. 8等分にわけ、丸めて15分ベンチタイム。ガス抜きをしながら丸めなおして天板の上で2次発酵。少しふっくらとしたら2次発酵完了。

4. 溶き卵を塗り、190℃に予熱したオーブンで色づくまで10分焼く。

5. フィリングを準備する。アーモンドパウダーをフライパンで軽く炒る。炒ったアーモンドパウダー、砂糖、牛乳を少しずつ入れてペースト状にする。

6. 生クリームを泡立て器ですくい上げた時、先端がお辞儀する程度の8分立て程度に泡立てて、星口金をつけた絞り袋に入れる。

7. 組み立てる。焼けたパンの上部を切り落とし(この部分がふたとなる)、パンの真ん中をくり抜く。くりぬいた生地は、細かくちぎり先ほどのフィリングに加える。パサつくようなら牛乳を加える。くり抜いた部分にフィリングを詰め、平らにし、生クリームを絞りふたをし、上から粉糖を茶漉しでまんべんなくふりかける。

まとめ

セムラを作る際は、アーモンドあんをたっぷりと入れて作ってほしいので、この記事で紹介するレシピはアーモンドあんが少し多めです。パンのくりぬき方でも、アーモンドあんの入り具合が変わってきますので、くり抜く穴は小さすぎず大きすぎず様子を見てください。カルダモンは、パウダー状のものでもよいですが、砕いたカルダモンを使った方が爽やかなカルダモンの風味が際立ち、よりスウェーデンらしい本格的な味わいとなるので断然オススメ。スウェーデンでは大きなセムラが一般的ですが、小さめに作って、いくつもミニセムラを並べても可愛らしいかも。

Profileこのレシピを考えた人

市東 玲美奈

東京から会津に移り住みスカンジナビア料理や郷土食を学び、菓子の卸やケータリングなどを行う。自然や植物を生かした料理や菓子製作の活動もしている。栄養士。

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